老人ホームを運営する社会福祉法人(Q&Aサービスでの誹謗中傷)の事例
- 2016/2/10
- 解決までの具体例
目次
誹謗中傷の発見
社会福祉法人Aは老人ホームを複数運営していましたが、ある日、従業員から、「有名なネット上のQ&Aサービスに、社会福祉法人Aが運営する老人ホームでは、人手不足で職員に不満がたまり、日常的に入居者に対する暴力や横領などの虐待が行われている」等の書き込みがなされていると指摘されました。そこで、社会福祉法人の経営者は弁護士事務所に相談に来られました。何故こんな書き込みをされたのか、見当もつかない。調査もしてみたがそのような虐待は行われていないのに、と怒りを覚えておられました。
IPアドレスとタイムススタンプの開示
社会福祉法人Aは、弁護士を通じてQ&Aサービスの運営会社Yに対し、任意で、書込みをした人のIPアドレスとタイムスタンプの開示をするよう求めましたが、拒否されました。(任意で開示することも稀にありますのでまずは任意で要求しますが、ほとんどが拒否されてしまいます。)
そこで、社会福祉法人Aは、弁護士を通じて、運営会社Y社に、IPアドレスとタイムスタンプの保存を確認した上で、発信者情報開示請求の仮処分を申し立てました。
仮処分決定に基づいて、Q&Aサービスの運営会社Yから、IPアドレスとタイムスタンプが開示されました。
プロバイダーに対し、「発信者情報開示請求訴訟」を提起
次に、弁護士は、開示されたIPアドレスから、書き込みをした人は、プロバイダーNを利用していることが明らかになりましたので、プロバイダーNに、ログの保存を確認した上で、氏名と住所の開示を求める発信者情報開示請求訴訟を提起しました。
発信者の特定と損害賠償請求
発信者情報開示請求訴訟の勝訴判決後、2週間経過して判決が確定すると、プロバイダーNから氏名・住所が開示されました。社会福祉法人Aは弁護士を通じて、開示された氏名・住所に基づき、書き込みをした人に対し、内容証明郵便にて損害賠償請求をしました。
すぐに、書き込みをした人から連絡があり、謝罪することを条件に、損害額を分割で支払う旨の和解が成立しました。
弁護士からのコメント
yahoo知恵袋やOKwaveなどのQ&Aサービスは、グーグルなどで検索した場合、上位に表示されることが多い人気サイトですが、誹謗中傷の書込みがされることも少なくありません。サイト側が会員登録している人の氏名住所を把握している場合もありますが、匿名で登録できることが少なくありません。そこで、上記の流れで相手を特定して損害賠償することになります。
実際の事案では、虐待が真実であるか、真実であると信じたことが相当であったかどうかが争点になります。この点の反論が誹謗中傷事件ではポイントになることが多いです。
発信者情報開示請求訴訟について詳しくは「問題解決までの流れ ③事件の着手 編」 をご覧ください。