問題解決までの流れ ③事件の着手 編
- 2016/1/1
- 問題解決までの流れ
③ 事件の着手
9. 戦略の立案
見通しをお伝えするだけではなく、ご依頼された場合、その後の展開がどのようになるか、についても戦略を提案いたします。交渉や裁判が始まれば、相手方から反論がされます。そこで、予想される相手方の反論を踏まえて、当方の再反論を事前に検討しておく必要があります。
そして、最終的な解決として、どのような解決が予想できるのか、ご相談者の方にとって、どのような解決が最も望ましいのかをご提案いたします。そのつど、「現在こういう状況であり、このような戦略を立てています」と近況報告を細やかにすることをモットーとしています。
10. 削除請求のための手続き開始
(1).任意での削除請求
サイトによってはメールやフォームからの任意での削除請求することで削除されることがあるためまずは任意での削除請求を試みます。
(2).任意での削除請求に応じない場合には、裁判所に削除請求仮処分(裁判手続)を申立て
殆どは任意では応じてくれませんので裁判手続きをすることになります。
(3).仮処分命令の発令のため、裁判所に30万~50万円の担保金を積む(後で返還されます)
申立て〜仮処分の発令:通常10~20日(※管理会社が海外の場合半年以上かかることもあり)
11. 発信者の特定
1. IPアドレスやタイムスタンプ(以下「IPアドレス等」といいます。)を特定するため(サイト・サーバーの管理者等に対し、書き込みが名誉、プライバシー、商標権、著作権等の権利を侵害することを主張して)、IPアドレス等の任意の開示請求をしていきます。
2. 掲示板の管理者などが任意に開示することもあるのですが、任意に開示しない場合には、発信者情報(IPアドレス等)開示を求める仮処分(裁判手続)を申し立てます。
・申立てから仮処分命令まで2~3週間
・命令後IPアドレスの開示まで1~2週間
3. IPアドレス等が開示されると経由プロバイダー(つまり、発信者が契約しているプロバイダー、携帯電話事業者等)が明らかになりますので、経由プロバイダーに対し、発信者情報(住所・氏名等)開示を求めます。
発信者の住所・氏名等が任意で開示されることは非常に少なく、訴訟手続によらなければならない場合がほとんどですので、経由プロバイダーを相手方として発信者情報(住所、氏名)の開示請求訴訟を提起します。
経由プロバイダーがログ(発信者のIPアドレス等)を保存する期間は3ヶ月程度です。ところが、訴訟により勝訴判決を得るまでに3ヶ月以上かかるのが一般です。勝訴判決を得てもログが削除されてしまっては意味がありません。そこで、発信者情報開示請求訴訟に先立ち、発信者情報消去禁止(ログ保存)仮処分の申立てをすることが多いです。
・上記仮処分と同程度
※ 発信者情報の開示・保存に関する仮処分、訴訟では、書き込みをした人が被告となるのではなく、サイト管理者、プロバイダー等が相手方となります。この訴訟では、書込みの内容が名誉毀損、プライバシー侵害、商標権侵害、著作権等の権利を明白に侵害すること等を、こちらが主張立証します。
4. 発信者情報開示請求訴訟では、プロバイター等の相手方の代理人弁護士が裁判で反論してきます。
書込みをした人(プロバイダー等の契約者)に意見照会をした上で、その意見照会の回答に基づき、「書込みの内容は原告(依頼者)を対象としたものではない、書き込みの内容は真実であるから名誉棄損は成立しない。」などの反論がされることが多いです。
5. 反論に対する再反論のために、依頼者の方と打ち合わせをして準備をします。
6.このような反論と再反論が繰り返された後、判決が言い渡されます。
・発信者情報開示請求訴訟の提起〜 判決 2~5ヶ月
・判決確定(言渡し)〜 確定 2週間
・プロバイダー等から発信者の住所氏名が開示 2週間~1ヶ月程
※ 誹謗中傷対策の会社(よく見ると探偵事務所のこともあり、法律のプロでもない会社も熱心に広告活動しているので、本当に効果があるのか依頼される場合は気をつけてくださいね。)や行政書士・司法書士は、そもそも、発信者情報開示請求の仮処分や訴訟の代理人となることができません。私が個人的に存じ上げている司法書士や行政書士は良心的な人ばかりですが、削除請求を請け負っている悪質な会社かもしれませんので、注意するとよいかもしれません。また、5万円〜という低額な設定にしている弁護士事務所についても、「仮処分や訴訟手続まで含んだ料金であるか」を確認した方が良いでしょう。
12. 損害賠償請求
1.発信者の住所と氏名が判明したら、その人に対し内容証明郵便で損害賠償を請求をします。相手方から連絡があって交渉し、折り合えば示談が成立です。まずは示談が成立するために活動します。
交渉が決裂すれば、損害賠償請求訴訟を提起することになります。プロバイダー等に対する発信者情報開示請求訴訟で、すでに権利侵害が明白であることが認められて勝訴判決を得ていますが、書込んだ本人との裁判に対する損害賠償請求訴訟ではもう一度裁判をしなければならないのです。現在の法制度には不満がありますが、やむを得ないところです。
2. 判決が言い渡されると、損害金を振り込んでくる相手方が多いですが、判決が出ても支払わない(支払えない)という人もいます。
支払がない場合には、別途強制執行手続を依頼していただき、1. 相手方の預金口座を差押える 2. 給与債権を差押さえる 3. 不動産を差押さえるなどの方法により、損害賠償金を回収することになります。
④ 解決による事件終了!へと続く