「名誉毀損」 よくある質問

目次

 

 

Q そもそも名誉毀損とは?どんな意味ですか。

名誉毀損とは人の品性、徳行、名声、信用等の人格的価値について社会から受ける客観的評価である名誉を違法に侵害する、つまり、社会的評価を低下させることを言います。

 

 

Q 表現内容が社会的評価を低下させるかどうかはどのような基準で判断されるのですか。

一般読者の普通の注意と読み方を基準とするとされています。(最高裁昭和31年7月20日判決民集10巻8号1059頁)

「一般読者の普通の注意と読み方」と言われても基準となっていないような気がしますが、ネット上の書込みの場合、発言の経緯、前後の文脈、被害者からの反論も併せ考慮した上で、書込みに参加している一般の読者を基準として、当該書込みが人の社会的評価を低下させるかどうかで判断するとことになります(東京地裁平成13年8月27日判決、判例タイムズ1086号181頁参照)。

当該書込みだけを取り上げて判断するのではないですし、掲示板等に参加していない一般人を基準とするわけではないということがポイントです。

 

 

Q  具体的にはどんな場合、社会的評価を低下させたことになるのですか。

被差別部落出身者、精神障害者、同性愛者であることは、その人の客観的な人格的価値とは無関係ですが、社会にはまだ偏見や差別が存在しますので、これらを表現する行為は社会的評価を低下させるものとして名誉毀損に当たるとされています。
(同性愛について、東京高裁平成18年10月18日判決判例時報1946号48頁。ただし、同性愛者であることについては、別途プライバシー侵害の問題となるでしょう。)

 

なお、名誉毀損が成立するかどうかは、その表現内容が真実であるかどうかとは基本的に無関係です。社会的評価を低下させるかどうかによって判断されるのです。

(名誉毀損にあたるとして、真実性・相当性の法理によって、違法性が阻却されるかを検討する際には真実であるかどうかは重要となります。)

 

 

Q  特定多数の人を対象とする表現は名誉毀損になりますか。例えば「関西人は電車の中でもうるさい。買い物の際にもすぐに値下げ交渉してきて、銭にやかましい。」と言ったら名誉毀損になりますか。

個人的には、関西人が電車の中でもよくしゃべることは、エネルギッシュであることの表れで、値下げ交渉することは、商人としての資質を備えていると思いますが、ここでは、一般に社会的評価が低下すると考えてみましょう。

しかし、それでも関西人に対する名誉毀損は成立しません。特定の人をは対象とした表現ではないからです。

裁判例でも、「朝鮮征伐」という週刊誌の表現が、朝鮮籍を有する人の名誉感情を侵害するかが争いになった事件がありますが、裁判所は、当該原告がその表現について損害賠償を請求することができないと判断しています(京都地裁昭和50年7月11日判決、判例タイムズ332号304頁)。

また、東京都の元知事が「文明がもたらしたもっとも悪しき有害なものはババアなんだそうだ」など述べたのに対し、多数の女性が原告となって元知事を訴えましたが、裁判所は、特に原告ら個々人を対象とした表現ではないとして損害賠償請求は認められませんでした(東京地裁平成17年2月24日判決判例タイムズ1186 号175頁)。

アイデンティティに関わる表現について、怒りを覚えることは理解できますが、特定の個人や法人に対する表現でない場合には、名誉毀損であるとして損害賠償請求することはできません。議論によって解決していくべき問題だと現在は考えられています。

 

 

Q 社会的評価を低下させると、すぐに名誉毀損が成立してしまうのですか。それでは、政治家のスキャンダルや犯罪について発言することができなくなってしまいませんか。

他人の名誉を毀損する表現行為であっても、その行為が次の要件をみたす場合には責任を負うことはありません(最高裁判所昭和41年6月23日判決民集20間後5,118号、判例タイムズ194号83頁)。

【真実性の法理】
公共の利害に関する事実である
専ら公益を図る目的に出た場合
③摘示された事実が真実である場合

 

【相当性の法理】
上記①②

③摘示された事実が真実であると信ずるにつき相当な理由がある

真実であることを証明するのは大変です。表現の自由を保障するために、真実であると証明できなくても、合理的資料または根拠に基づいた表現であれば、名誉毀損による責任を負う必要はないのです。

上記③の具体的な判断基準の例としては、「報道機関として一応真実と思わせるだけの合理的資料または根拠」があれば足りると言われています。裏を取る必要があるということです。

 

Q 意見や論評であれば名誉毀損は成立しないのですか。

意見や論評であっても名誉毀損が成立します。しかし、自由に意見や論評を言えない世の中は息苦しいですよね。裁判所は、憲法上の重要な権利である表現の自由についても配慮していて、次の条件を満たすときに限って、意見や論評についても名誉毀損は成立します。

公共の利害に関する事実である
専ら公益を図る目的に出た場合(①②は、真実性・真実相当性の法理と同じ)
④その内容が人身攻撃に及ぶなど、意見ないし論評としての域を逸脱したものではない
⑤意見・論評の前提としていることの重要な部分が真実である

以上の要件を充たせば名誉毀損の責任を負いません。

 

 

Q そうすると、意見や論評であれば、名誉毀損が成立しにくくなるので、意見ないし論評にあたるかどうかが重要になりませんか。その区別はどのように行われるのですか。

 

証拠によってその表現内容の存否を判断することができる場合は、事実の摘示と考え、判断できない場合には意見・論評の表明と考えられます。
(前傾最高裁平成9年9月9日判決、最高裁平成16年7月15日判決民集58巻5号1615頁、判例タイムズ1163号516頁)

 

 

Q 名誉とは別に名誉感情と言うのがあると聞きました。名誉感情とはどのようなものですか。

名誉感情とは、人が自己自身の人格的価値について有する主観的な評価等です。いわゆるプライドとか自尊心といった内心の感情です。
こういった内心の感情について法的保護に値するかどうかについては議論がありますが、社会通念上許される言動を超える侮辱行為は、民法上、人格権の侵害として慰謝料請求が認められます。

 

 

Q 加害者に謝罪広告を出させる事は可能ですか。

名誉毀損の被害を受けた場合に謝罪広告を出させることができます
日本の民法は、金銭賠償の原則がとられていますので、原則として不法行為の加害者に対して裁判において謝罪を求めることができません。しかし、名誉毀損の被害を受けた場合には、加害者に対し、名誉を回復する処分として謝罪広告を求めることができます。

 

どんな場合に謝罪広告が認められるのですか。

①謝罪広告が名誉を回復する手段として相当であり(手段の有効適切性)
     かつ
②名誉毀損状態が現存している場合
     であることが必要です。

 

名誉毀損が認められれば、常に謝罪広告が命じられるわけではありません。謝罪広告が名誉を回復する手段として有効かつ適切であることが必要なのです。全国紙に謝罪広告を載せるには多額の費用がかかりますので、被害の実態と比較して謝罪広告に多額の費用を要する場合には認められにくくなります。

名誉毀損から長期間経過して、世間の人が名誉毀損の表現を忘れているような場合には、名誉毀損状態が現存しているとは言いがたくなります。

 

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