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よくある質問 (まずはじめに)
- 2015/12/29
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目次
Q「名誉毀損」とはそもそもどういう意味ですか。
名誉毀損とは,わかり易く言えば,「他人の社会的評価を低下させる」という意味です。
裁判例上,名誉毀損で保護される名誉は外部的名誉を意味すると言われています。
嘘である必要はありません。真実を述べても名誉毀損になります。人の社会的評価を低下させたかどうかがポイントです。
例えば,オウム真理教は狂気の宗教集団である旨の表現行為は,悪口と言えば,悪口ですが,当時,オウム真理教の社会的評価は殊更に低下させるものではないとして,名誉毀損に当たらないと判断されています。
(東京高裁平成14年9月25日判決)
社会的評価を低下させたかどうかの判断は非常に難しい場合があります。
Q バカ、アホ等の罵詈雑言も「名誉毀損」となるのですか。
名誉毀損が成立するには、事実を摘示することが必要です。罵詈雑言が事実の摘示を含まないのであれば、直ちに名誉毀損となるわけではありません。
しかし、名誉感情を害したということで不法行為責任を負うことはあります。
Q プライバシー権とはどのような権利ですか。
プライバシー権は私生活をみだりに公開されないという法的保障ないし権利と言われています。
その侵害に対しては侵害行為の差し止めや精神的苦痛に因る損害賠償請求権が認められます。
Q どんな場合にプライバシーが侵害されたと言われるのですか。
①私生活上の事実または私生活上の事実らしく受け取られるおそれのある情報だること
②一般人の感受性を基準にして当該個人の立場に立った場合に、他者に開示されることを欲しないであろうと認められる情報であること
③一般の人に未だ知られていない情報であること
以上の3つ要件が充たされる必要があります。東京地裁昭和39年9月28日判決(「宴のあと事件」)で示された考え方です。
Q 著作権を侵害された場合にも発信者情報の開示請求はできますか。
できます。
Q どのような場合に著作権が侵害されたとして発信者の情報が開示されるのですか。
①情報の発信者が著作権等を侵害であることを認めている場合
②情報が著作物等の全部または1部を丸写ししている場合
③著作物等の全部または1部を丸写ししたファイルを現在の標準的な圧縮方式(zipファイル等)により圧縮している場合です。
Q 商標権を侵害された場合発信者情報の開示を請求できますか。
できます。
商標権の侵害を理由に発信者情報の開示を求める場合、請求者が商標権者であることが前提となります。そのため商標権者であることを示すため商標原簿の写しを示す必要があります。
Q どのような場合に商標権侵害があるとして、発信者情報の開示が認められますか。
商標権の侵害とは、登録商標と同一又は類似の商標を、登録商標の指定商品又は指定役務と同一又は類似の商品・役務に権利者に無断で使用することなどをいいます。
このうち情報の流通により商標権が侵害されている場合としては次の例が考えられます。
① 業として商品を譲渡するものが、
② 商標権者の商標登録に係る指定商品又はこれに類似する商品について、
③ 商品を譲渡するために商標が付された商品の写真や映像等をウェブページ上に掲載する行為、または登録商標と同一又は類似の商標を(広告等を内容とする情報に付して)ウェブページ上で表示する行為
Q 商標権侵害の場合には、必ず発信者情報が開示されるのですか。
いいえ。
発信者情報の開示請求を受けるためには権利侵害が明白であることが求められています。
商標権侵害が明確であると認められるためには次の要件を満たすことが必要であるとされています。
a 次のいずれかに該当しウェブページ上に表示された商品に関する情報が新製品に係るものでないと判断できること
① 情報の発信者が真正品でないことを自認している商品
② 商標権者により製造されていない類の商品
③ 商標権者が真正品でないことを証する資料20を示している商品(②に該当するものを除く)
b 次のすべての事項が確認でき、商標権侵害であることが判断できること
① 広告等の情報の発信者が業として商品を譲渡等する者であること
② その商品が登録商標の指定商品と同一又は類似の商品であること
③ 商品の広告等を内容とする情報に当該商標権者の登録商標と同一又は類似の商標が付されていること
同一類似の判断については商標広報の写し又は独立行政法人工業所言う情報研修館が提供する特許電子図書館のウェブページにおいて当該商標に関する情報検索した結果の写し等によるより確認すると言われています。
商業の類似性の判断は必ずしも簡単ではない場合もありますガイドラインでは登録商標と実質的に同一と判断できるもの及び裁判所または特許庁によって類似性に関する判断が示されている者対象とされています。
プロバイダ責任制限法発信者情報開示関係ガイドライン参照
Q 掲示板に名誉を毀損される書き込みをされたのですが、投稿者を特定できますか。
できます。もっと詳しい方法はこちらのページ(11.発信者の特定)で説明しています。
Q 知らない人に名誉毀損、プライバシー侵害のメール (例)裸の画像を添付) を一斉送信されたのですが、メール送信者を特定することはできますか。
残念ながら、プロバイダー責任制限法に基づく「発信者情報開示請求手続」を利用して特定するのは困難です。
「発信者情報開示請求手続」は、インターネット上の書き込みを対象としていて、メールを対象としていないからです。
法制度としては大変不満ですが、こうした場合は、刑事犯罪として警察に被害届、告訴するなど他の手段を用いることになります。
Q 自分の犯罪歴を書き込まれていますが、削除できるのでしょうか。逮捕の報道など犯罪歴は永遠に掲載されたままなのでしょうか。
逮捕の報道はすぐには削除できません。というのは、公共の利益に関する事実を公益目的で報道していると考えられており、違法とはならないからです。
しかし、一定期間経過すれば,削除が認められます。
軽微な犯罪事件であれば、3年から5年経てば、削除が認められる可能性があります。
Q 1年前のネット上の書込みの投稿者を特定できますか。
残念ながら難しいです。一般的に投稿日から3から6ヶ月以内であれば、投稿者を特定できます。
期間が限られるのは、掲示板等のログ保存期間が限られているからです。ログがなくなると発信者を追跡する端緒がなくなってしまうのです。
ただし、1年前の投稿者と最近の投稿者が同一人物であると説明できるのであれば,特定できる可能性がありますので、相談してみて下さい。
Q ネット上の書込みにより名誉毀損された場合、いくら損害賠償できますか。
慰謝料として10万円から100万円超が認められるケースが多いです。皆様が想像されているよりも、裁判で慰謝料が認められる金額は低いのです。
アメリカの事件で数億円、数十億円といった多額の損害賠償が命じられたというニュースがありますが、アメリカでは、懲罰的損害賠償制度が認められているなど法制度が日本とは異なるのです。
また、日本でも、著名人が新聞社や出版社を相手とした名誉毀損に基づく損害賠償請求をするケースでは300万円前後の賠償が命じられることが少なくありませんが、著名人がマスメディアにより名誉毀損の損害を受けた事件と一般の方がネットで書込みを受けた事件とでは、損害額に差が出てしまうのが現状です。
さらに、営業上の損害も請求したいと相談される方がたくさんいらっしゃいますが、書込みにより、何らかの売上が下がった等の営業上の損害(例えば、書込みがなかったならば、△△円は儲かっていたのに、というようなこと)は、因果関係の証明が難しいケースが多いです。詳しくは弁護士にご相談下さい。
Q 名誉毀損の損害賠償請求する場合、弁護士費用は相手に請求できますか。
裁判所は、慰謝料等の損害額の約10%を弁護士費用として支払うよう命じてくれます。
例えば、裁判所が慰謝料100万円を認める場合、これに加えて弁護士費用10万円も損害として認められます。
Q 投稿者を特定するために発信者情報開示請求手続を要した場合、その弁護士費用も投稿者に請求できます。
投稿者を特定するために要した弁護士費用も請求できます。
投稿者を特定した後の損害賠償請求訴訟において、損害賠償請求訴訟の弁護士費用に加えて、発信者を特定するために要した弁護士費用も損害として請求できるとした裁判例が存在します。
Q ネットに書込みをされて、裁判をした場合、結局、いくら請求をできるのですか。具体例を教えてください。
① 発信者情報開示請求手続に要した弁護士費用 30万円
② 名誉毀損による慰謝料 100万円
③ 名誉毀損請求手続の弁護士費用 13万円(=(100万+30万円)×10%)
④ 上記①ないし③合計143万円に対する書込みがされた日から支払い済みまで年5%の遅延損害金
⑤ 訴訟費用(裁判所に収める印紙や郵便切手代等)
※ ①の弁護士費用は、裁判によって認められる金額が異なります。必ず30万円が認められるという趣旨ではありません。
Q 自分の逮捕記事がネット上に残っていますが,これを削除できますか。
削除できます。しかし,逮捕が真実であれば逮捕後、一定期間は削除できません。
ノンフィクション逆転判決(最高裁平成6年2月8日判決)は、「ある者の前科等にかかわる事実が著作物で実名を使用して公表された場合に、その者のその後の生活状況、当該刑事事件それ自体の歴史的又は社会的な意義その者の事件における当事者としての重要性、その者の社会的活動及びその影響力について、その著作物の目的、性格等に照らした実名使用の意義及び必要性を併せて判断し、右の前科等にかかわる事実を公表されない法的利益がこれを公表する理由に優越するときは、右の者は、その公表によって被った精神的苦痛の賠償を求めることができる。」と判断しています。
Q 逮捕の報道記事はいつから削除できますか。
逮捕の報道記事が真実であれば,逮捕直後に削除することは難しいです。
公訴時効期間や民事の時効期間(3年)経過後は削除できると言われています。
Q 執行猶予付有罪判決を受け,現在執行猶予中ですが,逮捕の報道記事を削除できますか。
できる場合もあります。
Q ハイパーリンクだけが書かれた書込みを削除したり,発信者を特定したりできますか。リンク先に自分の名誉を棄損する記事が記載されているのです。
リンク先の記事が名誉権侵害である場合でも、裁判例は分かれています。
肯定説,否定説があります。詳しくは弁護士に相談された際にご説明します。
Q 裸の写真をネット上にアップロードされて困っています。削除できますか。
リベンジポルノ法に基づき削除請求することができます。
Q リベンジポルノの被害者の遺族ですが削除請求できますか。
削除できます。
削除請求権は,相続できないと言われていますが,遺族の方自身の敬愛追慕の情に基づき削除請求できると言われています。
Q 検索サイトのキャッシュを削除できますか。名誉棄損された記事は削除されたのですが,検索すると結果が出て困っています。
グーグルなどにキャッシュの削除を依頼することができます。
Q グーグルの検索結果で表示されるサイトの説明文(スニペット)を削除できますか。
スニペットが名誉棄損と認められれば,削除請求できます。
オンラインで任意に削除請求することもできます。
Q グーグルのサジェスト機能で表示されるキーワードを削除することはできますか。
社会的評価を低下する記載が羅列されている場合、削除できる場合があります。
また、サジェストの任意削除請求に応じる検索サイトが多いです。
Q 検索ボックスに自分の名前を入力すると、犯罪名が関連キーワードとして表示されます。関連キーワードを削除することができますか。
サジェストと同様に、関連キーワードにより社会的評価が低下する場合、削除できる場合があります。
また、サジェストの任意削除請求に応じる検索サイトが多いです。
Q 掲示板に書込みをしたら、自分が契約しているプロバイダーから意見照会文書が届きました。どうしたらいいですか。
名誉毀損、プライバシー侵害されたと考える人は、投稿者のIPアドレスからプロバイダーやキャリア(例えばニフティやNTTドコモ、ソフトバンクのこと)を特定して、住所・氏名等を開示するよう求めます。
プロバイダーやキャリアは、契約者(例えば、書き込みをした本人や、書き込みをした当人が未成年ならその親 など)に対し、住所・氏名等を開示して構わないか、を照会します。
これが意見照会文書です。
この意見照会文書に自分の言い分、例えば、「書込みの内容は真実であり公共の利害に関する事実であり公益目的での書込みであるから名誉毀損とはならない」などと記載します。
プロバイダーやキャリアは、あなたの意見をもとに発信者情報を請求した人(名誉毀損されたと考える人)に反論してくれます。
意見照会文書の書き方についてもお気軽にご相談下さい。
Q 社会的に善人であると信じられている人について,実際はひどい人間であることを暴露するのは名誉棄損に当たるのでしょうか。
虚名(実力以上の評判や名声のこと)でも保護されますので,この場合も名誉棄損に当たります。
実際にはその人がひどい人物だとしても、それが社会に知られていなければ、その表現行為によってその人の社会的評価を低下したということになります。
例えば,「社会的には妻と家族を大切にする誠実な男性だ」と周りから思われていた人について,乱れた女性関係を指摘する表現行為は名誉棄損となってしまうのです。
Q 故人の名誉を棄損された場合,誰が名誉棄損を主張できるのですか。
そうですよね。本人が亡くなっているのですから、本人はもちろん名誉毀損された!とは主張できませんね。では主張できるなら遺族なのかな、と思われる方も多いと思います。
遺族ができることはできるのですが、できる場合が限定されていますので、どういうことなのかこちらのページ( Q3. )で詳しく説明していきます。
Q 会社も慰謝料請求できるのですか。
会社は,心を持つ人間ではありませんが,名誉を棄損されれば,損害賠償請求できます。
【理由】個人が名誉棄損された場合,慰謝料として損害賠償請求することになりますが,慰謝料というのは精神的苦痛を慰謝するものですから,会社は人間ではないので精神的苦痛を感じないようにも思えます。
しかし,民法710条により,会社にも無形の損害が発生しうるので,会社に対する名誉棄損についても損害賠償請求ができるとされています(最高裁昭和39年1月28判決)。
Q ネット上に名誉棄損やプライバシー侵害の書込みをした人を警察に逮捕してもらえますか。
逮捕してもらえる可能性はあります。
名誉棄損やプライバシー侵害の書き込みに対しては,民事上,不法行為責任が成立し損害賠償請求できますが,刑事上も,「名誉棄損罪(3年以下の懲役等)や侮辱罪(拘留または科料)」に当たり得る行為ですので,被害届や告訴をして,警察に捜査を求めることができます。
ただ,警察は,民事上の問題に介入させられることを嫌がりますし(「民事不介入の原則」などと言われます),名誉毀損は表現の自由の問題がからむこともあり、警察が逮捕するというのは相当悪質な事案で逮捕の必要性がある事案に限られるでしょう。
しかし,加害者を逮捕しないまでも,警察がプロバイダー等に発信者の情報の開示を請求して,加害者を特定した後,逮捕せずに捜査を進める場合もあります。警察に被害相談をすることは無駄にはなりません。
ただ、警察はあなたの代理人として捜査するわけではないですし,損害賠償請求をしてくれるわけではありませんし、多忙でなかなか時間を作ってもらえないのも現実です。そこで、悪質で執拗な被害を受けている場合には,事実関係や法的構成を整理した上で警察を訪れた方が警察の対応が早いのです。警察への相談も弁護士と一緒に行うとスムーズに話を聞いてもらいやすくなります。警察にいく場合も弁護士と一緒に行くをご検討ください。
根拠となる刑法の条文をご覧になりたい方は、こちらのページ(特に「誹謗中傷・風評被害全体について」のよくある質問Q2. )に掲載しています。